はしっこに、馬といる_前篇


旅といえば、

離島に行っていた時期があった。

きっかけになったのは、

奄美大島の加計呂麻(かけろま)島。


当時、友人が奄美で新聞記者をやっていて。

そこへ友だちと遊びに行ったら、

なんとなく加計呂麻行きが決まった。


奄美大島で迎えを待っていると、

海の向こうから、おじいちゃんが一人、

頼りないほどのちいさな船で迎えに来た。

その船にしばらく乗っていると、

360度、きれいな海しかない光景に、

圧倒されたのを覚えている。


ふっと吹いたら消えてしまいそうな、

ちっぽけな船の周りには、

一面に広がる、海、海、海…。

どこにも繋がっていないようで、

大きなものに包まれているような…。


離島では運搬に、時間もお金もかかる。

海を隔てて、物も情報もゆっくりと少しずつ届くので、

必然的にシンプルになる。

そのシンプルさに、衝撃と、

懐かしいような安心感を感じていた。


インドの先住民の村や、

聖地の生活で感じていたのも、それと似ている。

いつの間にか、

自分の中にその感覚は取り込まれて、

乾いたように求めていた時期とは、

違う付き合い方になってきた。


恋から愛へと自然と移り変わっていくように。

どの時間も通り過ぎてゆく、

そのことが愛おしさの源だな、と思う。


海に流れ着いた種を拾って売る、

それを仕事にしていた友だちがいる。

どこか違う国から、

海を越えどんぶらどんぶら流れてきて、

辿り着いた種たちを浜辺で拾う。

そして種好きの人たちのもとに、それがまた届いてゆく。


彼女がその種を拾っていたのが、与那国島。

日本の西端で、

そこには与那国馬という、日本の在来馬がいる。

よく見かけるスラッとした馬とは違い、

がっしりと小柄なその体(体高約110~120cm)。


夏には海でいっしょに遊べたり、

放牧されてて、公道にいたりする。

話しを聞いた時から、

いつか会いに行ってみたいと思っていた。


馬や象は、

繊細さと賢さが同居していて、

なんだか気になる存在。

近くでゆっくり観察してみたかった。


それが実現したとき、

馬たちにすっかり魅了されて買ったのが、

『馬語手帖』。

馬のかすかな動きや鳴き声が、

チャーミングな挿絵と共に書かれていて、

馬がなにを表現しているかがわかる本。


馬という群れの生き物が、

個体意識の強い人間とは、

まったく違った思考回路を持っていること。

自分の常識を覆される、その発想と行動が、

とても新鮮に輝いて見えた。

わたしはちょっと馬寄りかもしれないな、なんて、

図々しくも思ってみたり。


その続編に、偶然、

横浜の本屋さんで出会って、

びっくりし、心が躍った!

それが『はしっこに、馬といる』。


筆者と馬のカディの関係が書かれているのだけれど、

わたしが生き物に対する時の心持ちと似てて。

読みながら、

やっぱりちょっと特殊なのかも?なんて思ったり。


力でコントロールするということが、

本質的にも、能力的にも、欠けている。

それでも成り立つことがわかって、うれしい。


挿絵の馬の絵が、

動きをよく観察して描かれてて、

さらにときめく。



スタンダードにできなくても、

なんとかなるよね。

そんな気にさせてもらえる、

ありがたい本です。

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