灯台

今だったら言葉にできる気がして。
3.11のとき思ったこと。
そこから変わり続けたようで、
つながっていた道のことも。

地震のあったその瞬間、
わたしは鎌倉の定食屋コバカバで働いていて、
いつものように魚を焼いていた。
地震に驚きながらも、
ガスを止めて、
お客さんを外に誘導して。
そこらじゅうの人がみんな外に出て、
道は人で溢れていた。

ほんとうにいろんなことがあって、
帰りは自転車を借りて帰宅した。
そのあと、
お店の営業をどうするか、
オーナーのうっぽんと電話で話していた。
子どものいるお母さんたちは、
西に避難するか悩んでいて。

わたしはそのとき、
灯台になりたい、と思った。
恐怖がそこら中に渦巻く中、
その渦にのまれるのではなく、
みんなが安心して、我に帰れって、
自分の望みをわかって、動き出せるように。
いつもあるものがいつものようにある。
その風景になりたかった。

そのときはこんなにうまく説明できなかったけど、
「みんなが安心するように、
いつも通り営業したい。
一人でもお弁当なら30個くらい作れるし」
と、伝えた。
うっぽんも、
「おれも営業したいと思ってるんだよね。
家族は避難したいと言ってるけれど」
という話しだった。

そんなこんなで、
お弁当を作って、
店内は自由に使ってもらうことにして、
店を開けることにした。
「家にいると気が滅入るだけだから」
と、他のスタッフも来てくれて、
いっしょにいつものようにご飯を作った。
ぬか床をまわして、
野菜を洗って切って、
体に染み込んだ、いつものリズムが流れ出す。

停電があったから、
冷蔵庫にペットボトルで作った氷を入れて冷やしたり。
レジが開かなくなったり、笑。
なんだかいろいろあったけど。
通りかかったり、
顔を出しに来たみんながホッとするのを見てると、
なんだかとてもうれしかった。
こんなときこそ、
笑顔や笑いが、人を蘇らせる。

二児の母であるスタッフは、
何がほんとかわからない現状に混乱し、
避難するか迷っていた。
「お母さんが安心した気持ちで子育てできることが、いちばん大事だよ」
と、伝えたものの、
誰にも真実がわからない中で決断していく難しさを、滲ませていた。

その数ヶ月前から、
オーガニックの農家のお手伝いもはじめていたので、
そこもいつも通り行って作業していた。
「放射能の影響で、
出荷できるかわからないけどね」と話しながら。
それでも土と野菜の中にいると、
自分に戻れる気がした。

ありがたい気持ちの半面、
人間の作ったもので起きた出来事なのに、
周りの生き物たちは巻き込まれて、
ほんとうに申し訳ないな、と思った。
本で原発がああいうものだと知っていたから、
ついにこの日が来たか、と。
その後も、植物や虫たちが、
ただ生きて死んでいく循環で、
土を浄化していることを思うと、
感謝しかない。

人と地球の関わりを思うと、
やっぱり負荷をかけ過ぎたな、と思う。
人が病気になることで、
体を根本から改善していくように。
地球も自分で調整してるな、と、ときどき思う。
そして子育てと似て、
能力はそのもの自体が持っているから、
余計なことをし過ぎないことが、
とても大事な気がする。

そうやって、これをきっかけに、
それまでずっと抱えてきた、
人という生き物への謎が溢れ出し、
その後の自分を動かしていったんだなー、
と、今となると、気づく。

海外に縁があるなんて、
思ってもみなかったわたしが、
そのあとから急に縁が生まれて。
フランスのエコビレッジで、
パーマカルチャーベースの、
自給自足の生活をしてみたり。
インドの先住民の村で、
自然と神さまとともに暮らす、
昔ながらの生活をさせてもらったり。
インドの聖山のある町で、
神さまを中心とした暮らしをしてみたり。
国内でもやっぱり、
同じような場所で暮らしたり。
大地を再生させる活動に参加したり。

ぐるりと一回りしながら、
やってみたかったことをやり尽くし、
戻ってきて、いまここにいる。

結局のところ、
広い世界の中で、
わたしはものすごくちっぽけで。
でも同時に、
自分以外の者になろうとしなければ、
可能性に満ちた生き物なんだ、
と、わかった。

こだわりがとれて、
ものすごくシンプルなものだけが、
手元に残った。

自分に必要なものは、
あんまりなかったし。
やっぱり子育てと同じで、
余計なことをしなければいいんだな、
って感じが、今はしている。
基本、ナマケモノなので、
なんにもしな過ぎっていう、
むしろそっちが要注意かもしれないけれど。
なにしろ座ってるだけでハッピーだから、笑。

縁あって暮らした場には、いつも、
生きるスキルとともに、
命への「愛」と、
アートのような「表現」があった。

わたしは、
自分が喜びだと思えることで、
人の力になる、
それができたら、うれしい。

空気が秋に変わってくると、
毎日歩いていた、フランスの森を思い出す。
ヨーロッパの秋の風景は、
なんだかロマンチックなんだよね。
たくさんの寄り道がくれた、
想い出というプレゼント。
そういうなにげない出会いを、
大切にしたいな。

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